日本歯科プロアシスタントスクール
副校長
渡辺 豊
医療法人ゆたか 理事長

1、歯科助手教育について

2、PASについて

3、澤泉仲美子について

4、スタッフ教育に大切なこと

5、豊先生がこれまでに行ってきた
  スタッフ育成

開業してかれこれ20年が過ぎます。思い返してみればさまざまな時代がありました。ユニット3台からはじめ、4台目が入ったのが開業から3,4年した頃だと思います。実はこの頃しばらく歯科助手を採用していませんでした。5台目が入った頃もまだ歯科衛生士だけでした。理由はよくあるヤツで、「受付やるにしてもアシスタントするにも治療がわかってなきゃできっこない」という理由でした。ドクター2名に常勤歯科衛生士4名、パート歯科衛生士3名。そんな構成でした。その後、運良く受付経験者の歯科助手が応募してきてくれて、はじめて歯科助手を採用することとなりました。その彼女を見て知ったのは「治療ができなくても受付もアシスタントも十分にできる」ということでした。私は歯科助手の力量をいぶかしんでいたわけです。

それを皮切りに歯科初心者の歯科助手の採用も進めていきましたが、なかなか長く続かない。2〜3年で辞めちゃう。どうせすぐ辞めちゃうなら育てるなんてバカバカしいし、育成にお金を使うなんてもったいない、そう思っていた時期がかなり長くありました。そうです。わたしはあろうことかスタッフを「コマ」程度にしか思っていなかった、ほんとうの意味で大事になんてしていなかったのです。

スタッフ教育に力を入れるようになったのは、ある歯科助手を朝礼で怒鳴り散らしてクビにしてしまったことがきっかけでした。彼女は退職するまでの間、居づらかったろうに、健気に気丈に振る舞ってくれました。彼女はシングルマザーで頑張っていた人で、職を失うことでどれほど苦境に追い込まれるかを考えることもできなかったほど私は愚かで浅はかでした。

「悪いのは彼女ではなく、僕自身じゃなかったろうか」「彼女たちをコマのように扱い、大切にしてこなかったのではないだろうか」。

ようやく「人を育てる」ということに意識が向き始めた時期でした。いまから10年ほど前のことです。特に大事にしたのは「みんなで学ぶ」ということでした。歯科医院の中には様々な職種がありますから、みんなで学べるものというとジャンルが限られてきます。当時すでにコーチング、NLPを学び始めていた私は、これらのコミュニケーション技法、つまりはコーチングであったり、リーダシップ法、チームビルディング法を全員で学びたいと思い、日本各地から優秀な講師を招聘し始めました。歯科医療的スキルよりも、知識よりも何よりもまず「人間性」「人間力」の学びをスタッフ皆で始めたのでした。

徐々に全員で学ぶ文化ができあがり、スタッフも長く続くようになり、すると自然とその職種ごとでさらに専門性を高めたい、という意欲が湧いてきます。自分の仕事を天職として全うしていきたい、という思いが募ってくるからです。

 

そんな折に出会ったのが澤泉仲美子という熱い熱い女性でした。

それまで衛生士教育は、かの著名な上間京子先生にすべてをお願いしていたのですが、あるとき突然、上間先生とともに仲美子先生が岡山の私の医院を訪ねてくださったのです。すっかり仲美子先生に魅入られた私はそののちに「歯科助手教育に特化して学校を作りたい。協力して欲しい。」との申し出に「もちろんです!タダでもやります!来るなと言われても行きます!」と即答したのでした。

その翌年、一年間に渡るカリキュラムを引っさげた歯科助手専門教育講座PAS(=日本プロアシスタントスクール)が東京で開講したのです。以来ずっとPASの講師として、昨年度よりは「副校長」の栄誉をいただいて歯科助手教育に、歯科医師として、あるいは人生の先輩として関わらせていただいています。

 

仲美子先生と私は、決してブレることのない軸が同じ、という点において完全に合致しています。コーチング、NLPをお互いの共通言語としながら、医療人(に限らず)は何にもまして「人間力」「人としての根っこ」を磨く必要がある、という点です。ホスピタリティーだとか接遇だとか、そのような陳腐な言葉を並べたてるのではなく、さらにもっと深く「人としてどうあるべきか」がPASのすべての学びの根幹にあります。その根幹の上に、おびただしい業務をこなさねばならない歯科助手ためのさまざまな知識、スキルを乗せていきます。もちろん、一年間で学びきれるものでは到底ありませんが、この一年がスタートとなり、スタッフはさらに成長を遂げていきます。もちろん歯科助手として、あるいは院長の右腕として、さらには魅力あふれる女性として、です。

 

確かに年間コースはハードルが高い、費用もかかる。行かない理由、行かせられない理由はいくつも思いつくに違いありません。

しかし、もしも院長として自院の歯科助手をPASに行かせるとしたら、それはまさに一生の宝ものをプレゼントすることとなるでしょう。そして必ず投資した以上のリターンが返ってくるでしょう。

また意を決して自力で受講しようとするなら、それもご自身への一生もののプレゼントとなることでしょう。

 

チャンスはいつも目の前にありますが、いつまでも逃し続けると二度とやってこなくなります。

どうぞいますぐ、怖がることなく手を伸ばして下さい。

その勇気こそが、人生の次のステージへの扉を開くのです。